赤坂憲雄さん(2)
- 作者: 中沢新一,河合俊雄
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2009/10/16
- メディア: 単行本
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「1」はすでに・つねに「2」を孕んでおり、この「2」は相反し/補うことで「1」という全体性を構築している。ここでは「1」/「2」が表裏をなし、心における相補性の原理として働いているのである。それがもっとも劇的に現れるのが、いわゆる二重人格の現象であるが、人間の心はそうした異常な現象を呈してまで、その全体性を回復しようとする傾向をもつのだ、と河合はいう。(略)影という現象もまた、「1」/「2」の相補的な関係の表出である。ユングによれば、ある個人の自我が否定し、受け容れがたいとする傾向のすべてが、その人の影であり、すべての人はそれ自身の影を、その人の黒い反面としてもつ、という。そして、影には個人的な影/普遍的な影があって、この普遍的な影はだれしもが受け容れがたい悪と同義とみなされ、昔話では悪魔などの姿をもって表象される。しかも、影は必ずしも悪とはかぎらず、「厄介なものではあるが、それなくしては人間味の乏しいものになってしまう」、そう、河合は述べている。