元祖【ひとり公論】

誰かには必ず、ほんの少しだけでも役に立つに違いない、という意味での公論

町田宗鳳さん

 

法然を語る 上 (NHKシリーズ NHKこころの時代)

法然を語る 上 (NHKシリーズ NHKこころの時代)

 

stevengerrard.hatenablog.com

仏教のみならず世界の宗教にはさまざまな大変意志力のいる禁欲主義的な行があるんですが、それをすること自体は素晴らしいことなんですけれども、かえってそういう世界に入っていくことによって、エゴが膨らんでしまうというか、自我意識が膨張してしまう。それは心理学で「自我膨張」というんですが、インフレーション―経済でも「インフレ」という言葉を遣いますが、神学にも「インフレ」という言葉がございまして、それは本当は自分を消すため、自己を消していくための行なのに、反対に厳しい行をすることによってプライドが出てくる。自慢が出てくるというのは、これはまさに心理学でいう自我膨張なんですね。ですから、私も長年臨済宗の雲水として道場で坐禅を組んでいた人間ですけれども、本来は行をすればするほど謙虚にならなければいかんのに、反対に俺は特殊な修行をしたんだ、と。普通の人がしないような行をしたんだ、という自慢が出てくる。そこにやはり宗教の恐さというものがあります。
 
本当は無心になって、自分を消して、神・仏に近づいていかなければいかんのだけれども、反対に自分が大きく出てしまう、と。幻想のエゴが膨らんでしまう、という面があるんですよ。ですから、先ほどの法然さんのお言葉、「いたずら事はする必要はない」というのは、とってもいいメッセージを現代の我々にも送ってくださっている、と思いますよ。