元祖【ひとり公論】

誰かには必ず、ほんの少しだけでも役に立つに違いない、という意味での公論

落葉松

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「落葉松」はとても好きな詩で、暗唱できるぐらいです。(暗唱「できた」かな 過去形かな。。)

落葉松

      一

 からまつの林を過ぎて、

 からまつをしみじみと見き。

 からまつはさびしかりけり。

 たびゆくはさびしかりけり。

      二

 からまつの林を出でて、

 からまつの林に入りぬ。

 からまつの林に入りて、

 また細く道はつづけり。

      三

 からまつの林の奥も

 わが通る道はありけり。

 霧雨のかかる道なり。

 山風のかよふ道なり。

      四

 からまつの林の道は、

 われのみか、ひともかよひぬ。

 ほそぼそと通ふ道なり。

 さびさびといそぐ道なり。

      五

 からまつの林を過ぎて、

 ゆゑしらず歩みひそめつ。

 からまつはさびしかりけり、

 からまつとささやきにけり。

      六

 からまつの林を出でて、

 浅間嶺にけぶり立つ見つ。

 浅間嶺にけぶり立つ見つ。

 からまつのまたそのうへに。

      七

 からまつの林の雨は

 さびしけどいよよしづけし。

 かんこ鳥鳴けるのみなる。

 からまつの濡るるのみなる。

      八

 世の中よ、あはれなりけり。

 常なれどうれしかりけり。

 山川に山がはの音、

 からまつにからまつのかぜ。