元祖【ひとり公論】

誰かには必ず、ほんの少しだけでも役に立つに違いない、という意味での公論

約束された場所で

約束された場所で―underground〈2〉

約束された場所で―underground〈2〉

(以下、引用)

河合(隼雄)
(略)我々がちょっとくらい瞑想の真似したって、僕らにも煩悩があるからなかなかうまくいかないんだけど、その「煩悩をもってなおかつ」というのが大きな意味を持つんです。ところがこの(オウムに行った)人たちは煩悩の世界が弱すぎるんです。
村上(春樹)
だからすぐに悟っちゃう。あまりにもすぐに悟っちゃう。
河合
面白いことに、あまり早く悟った人というのは、その悟りを他人のために役立てることができない場合が多いです。それに比べると、苦労して時間をかけて、「どうしてこんなに悟れへんのやろう。どうして自分だけあかんのやろう」と悩みながら悟った人のほうが、他人の役に立つ場合が多いんです。煩悩世界を相当持っていて、なおかつ悟るからこそ意味があるんです。
村上
僕もスポーツをやっていると、その中である種の覚醒みたいなことはあるんです。でもそこに精神的な意味を見出すことはありません。そういうこともあるんだろう、くらいに思ってます。うまく言えないんだけど、まわりとの関連の中で捉えているのかな。ところがこの人たちはヨーガをやってある種の覚醒があると、ぽーんと一気にそっちに行っちゃう。そしてまわりの世界との繋がりを放棄しちゃうんですね。(略)

(引用終り)