元祖【ひとり公論】

誰かには必ず、ほんの少しだけでも役に立つに違いない、という意味での公論

「飛び出す」感じをつかめ

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「抜ける」ことが大事だと書きました。満員電車から降りた瞬間に「抜け」て、集団に飲み込まれずに飛び出すこと。

 実は、早足で歩いたり走ったりといったフィジカルな(そして、ごく一般的な)健康法よりも、この「飛び出す」感覚の方がリアル健康法として重要視しています。

 まず、フィジカルコンディションをいくら整えたところで、ネガティブな気持ちのままならばリアル健康にはなれないのは自明です。前回書いたように、朝のお作法(通勤)をルーティン化することにより毎朝毎朝集団から「飛び出す」ことを続けてみて、この飛び出す「感じ」を自分の中で「つかむ」ことができれば生活が少しずつ変わってきます。すくなくともポジティブにはなれます。

 いえ、ポジティブになれるというよりは「少なくともネガティブにはなりえません」といった方が正しいかもしれません。



 ここでちょっと、ごくごく当たり前のことを書きます。

 朝の通勤電車には何百人何千人、あるいは何万人というビジネスマンが乗っているわけですが、もし全員で短距離走をしたら、あなたも私も、絶対に一番にはなれないでしょう。朝の満員電車に乗っているビジネスマンの中には、体育会系陸上部だった方とか、全国大会に出たとか、そういう猛者もいらっしゃるかもしれません。

 ところが、です。元陸上部だろうが日本記録保持者であろうが、皆が歩いているという前提であれば走って抜き去ることができるのです。つまり、朝の通勤時間帯、という限定されたシチュエーションであれば私でもあなたでも一番になれるのです。私が申し上げたいのは、単純に、「100%(一番に)なれるもんならなっときましょうよ」ということです。



 と、いうことを書くと、「……で?」「それがなんか意味あんの?」といったような反論が予想されます。意味は、あると信じて(実際あるので)とにかくまずやってみていただきたいと思うのですが、実はその、(素直に)まずやってみる、というところからしてリアル健康になるための訓練の1つなのです。

 意味(あるいは、自分にとってのメリット)をいちいち確認し、納得しないと前に進まないタイプの人に健康な人は少ないのではないかと私はにらんでおります(ただしまだ、論証はできていません)。



 どんなグループであろうが、どのようなカテゴリであろうが、どんなルール下であろうが、一番になるのは、精神衛生的に非常に良い効果をもたらします(簡単にいえば、「良質な自信が形成される」ということです)。

 私たちは、ふだんからあまりにも集団に飲まれてしまっていて、この「一番になる」(あるいは、「大多数」という集団を飛び出して少数で先頭集団を形成する)という経験が非常に少なくなっています(大人になればなるほど)。

 だからこそ、自分、特に脳に対してそういう経験をさせてあげなければならない。脳というのは実は(おそらく)シチュエーションをよくわかっていないので、「一番になる」という結果だけを経験させてあげればそれでよいのです。

 例えば、なんとかマラソン大会とか陸上大会で一番でテープを切るのも、フットサル大会でゴールを量産してヒーローになるのも、ライブハウスで満員のオーディエンスにキャーキャーいわれるのも、どれも「飛び出す」感じの実経験であり、とても気持ちの良いものなのでしょうが、今の私たちには、実現させるにはとても難しい。かといって、現在私たちが属するこの業界で、仕事の面で1つ頭抜けて飛び出して脚光を浴びたり、時代の寵児になるのはもっと難しいかもしれません。私たちの業界はほんの一握りの才能と、商売のうまい人たちによって牛耳られていますので……。

 ですので、「自分が一番になる」シチュエーションを、つくるのです。自分が絶対有利のシチュエーションをつくってそこでトップになる(他人に迷惑がかかったり、顰蹙をかったり恨みをかったりするようなシチュエーションでないことが前提)。一番になり続けて集団から「飛び出す」意識づけをしていきます。

 私が1つの例としてここで提示したのが、「朝の通勤時間」というシチュエーションでした。自動改札をゴールと決めて、電車からぱっと飛び出して一番で「ゴール」してみる。自動改札をくぐる瞬間には、自分がどこかの陸上競技場において満員の観衆の前で一番でゴールテープを切っているような情景をイメージしてみる(誰も私やあなたのことを見てはいませんが、朝は「観衆」だけはやたらにいますから……)。

 これなら、できるのです。実際に何百人あるいは千人単位の集団の中で「飛び出す」ことを実践できています。(2~3人の中で一番になる体験を積み重ねていくのも、悪くはないのですが、そこにずっととどまってしまったらあまり意味がないかもしれません)。



 通勤電車では99%以上の人が、競争などする気はさらさらありません。超混みの電車にもまれて身心ともに疲れている状況で、競争する気など起きないでしょう。という状況下で、自分だけが勝手に競争している気になって、電車から降りてダッシュで自動改札を駆け抜ける……。

 はたからみれば、その光景も、誰も競争する気のない状況で自分だけやる気満々という状況も、ちょっと滑稽かもしれません。でもいいのです。周りに迷惑さえかけなければ。

 「誰も競争する気のない状況」を見つけるクセをつけておくと、ビジネスでも役立ちます。ニッチ産業というのはそういうところから生まれてくるわけですし、そういう状況を目ざとく見つけることのできる人(プラス、強い実践力を持つ人)が一儲けできるのです。



 自分が、いろいろな集団に属する中で、そこでナンバーワンになれないからといってすねてしまって、自分は「『オンリーワン』だから!」と競争から降りてしまうのは、とてもよくない逃避です。

 肝要なのは自分が一番になるシチュエーションを自ら創造する姿勢です。朝の通勤時間は1つの、私が勝手に提示した例にすぎません。電車でなくとも、渋谷のスクランブル交差点で青になった瞬間に「飛び出す」でもよいのです。

 前回も書きましたが、こういうことを馬鹿にせず、ぜひやってみていただければと思います。自分が一番になったり「飛び出す」イメージを完全につかむことができれば、現実生活ではいつの間にか社長になっているかもしれません。世の中そんなものです。