元祖【ひとり公論】

誰かには必ず、ほんの少しだけでも役に立つに違いない、という意味での公論

技術者肌(のウソ)


技術者肌(のウソ) - シニアICT土方の【IT公論】

今やってる仕事がそうなのですが、自分ではまったく向いてない向いてないと思いながら必死に仕事しているうちに、時が過ぎ、ある程度「まわせる」ようになると、周りからは「すごく向いてる」みたいにいわれるようになってきたりします。

このギャップ。。

最初は、向いてない向いてないと思いながら仕事してるわけですから相当キツいわけです。それが、「あー、なんか楽になったな」と思う瞬間があり、そこからなのでしょうね、周りの評価が変わってゆくのは。

自分が、PCサポートデスクにいたときもそうでした。もう20年ぐらい前になりますか。。

エンドユーザからの電話を受けてPCのサポートなんて自分にはゼッタイにできないと思っていましたし、最初の数ヶ月はかなりキツかった記憶があります。僕が勤めていたサポートデスクは全国から電話がくるのでコール数が非常に多く、ユーザさんはつながるまでずっと待っているので、会話が始まったときにすでに相手はイラついているのです。「ちっ やっとつながったよ」といきなり舌打ちされることもあり、「なんでこんなにつながらねんだよ!」と最初からキレられることもあり。。(当時は「キレる」という言葉はなかったかも)

僕は自分が「技術者肌」であるに違いないと信じ、それゆえに電話でのサポートなんかできない(=「まったく向いてない」)と思っていたのです。

ですが、技術的にはそれほど高いレベルを要求されない仕事だったこともあり、そういったクレームのあしらいに慣れてくれば半年ぐらいで楽になってきます。


この歳になって、昔を振り返ってみてわかるのは、僕はそのような顧客サポートというものを上から目線でバカにしていたのだ、ということ。(若気の至りです。。すみません)

自分は、コミュニケーションに難があるという自分の致命的短所を認めたくなくて、「技術者肌」であると思い込もうとしていただけです。ただの現実逃避ですね。。

そのサポートデスクで働きはじめて、1年ぐらいで周りの評価が上がってきたことを感じていましたが(最初の数ヶ月はただの「お荷物」でした。。)結局自分で「向いてる!」と自覚することはなかったです。リーダ業務含め3年ぐらいお世話になったでしょうか。

でもまぁ、まだ若かったですし、「自分は向いてる!」と思うことで天狗にならなくてよかったのかもしれない。もしかしたらそこでスキルレベルの成長は止まっていたかもしれません。3年経ってもずっと自分は技術者肌だと思い込んでいたおかげで、「もっと難しい仕事」を希求し、次のステージへ飛び出すことができたのかもしれません。

向いてるとは思いませんでしたが結果的に電話応対の仕事を通してコミュニケーションスキルは飛躍的に上がりました。自分にとってはターニングポイントになった現場だったので、今ではとても感謝しています。

「周りが向いてるといってくれるんだったらむしろ向いてんじゃないの?」という結論に達するまでは、すごく時間がかかったのです。若い頃の自分のこだわりや思いこみというものは、実は独りよがりのちっぽけな(くだらない)ものにすぎず、他人のほうが自分のことを正確に評価してくれる。自分のことを評価してくれる周りの人がいる、という事実こそがとても幸せなことであって、そのことに感謝しなければならないのだ、なんてことがわかるのは、20代ではとうてい無理なのかもしれません。