日本的霊性
- 作者: 鈴木大拙
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1972/10/16
- メディア: 文庫
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宗教的立場から見る木石は、その心のない、情感のない、無意識のとこ ろを見るのではなくして、木石が我というものを立てないで、向うから来る客観的・環境的条件に相応して動く、すなわち万物が鏡に映るよう なところを見ているのである。(略)
しかしただ受動性と言うと、また誤られることもあろう。(略)心はう つすだけ ではない、そこに一つの行為性のあることを見なくてはならぬ。単なる受動でなく、その実、受動のうちに能動がある。(略)鏡には映すとい うがある。物が鏡 に映る、鏡は物を移す。うつるは受動性で、うつすは能動性である。(略)
鏡には、ああすべく、こうすべくと言うように、すべきはからいをもた ないところに鏡そのものがある。なんらの計画性をもたないところに、鏡の受動性の本質がある。またこれを「自然法爾」の姿とも言うのであ る。