元祖【ひとり公論】

誰かには必ず、ほんの少しだけでも役に立つに違いない、という意味での公論

赤坂憲雄さん

思想家 河合隼雄

思想家 河合隼雄

無意識の世界はフロイトによって発見された。(略)フロイト以前には、無意識という概念そのものが存在しなかったことを、記憶に留めてお必要がある。人間は心的に、意識/無意識にひき裂かれていなかったし、みずからの心身の内部に、異常なもの・聖なるもの・彼岸的なものを抱え込んでもいなかった。
それらは常に、外部から訪れてくる神や悪魔や精霊たちであり、かれらがもたらす授かり物であり、かれらとの遭遇のための旅こそがあらゆる物語の原動力となった。そして、見いだされた無意識の領域にたいして、フロイトは抑圧や偽装といった否定的な側面からアプローチしたが、ユングは対照的に、そこに「創造の源泉としての肯定的な」側面を認めることによって、まるで異なった方位へと足を踏み出すことになった。