元祖【ひとり公論】

誰かには必ず、ほんの少しだけでも役に立つに違いない、という意味での公論

死がボスキャラ

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この考え方、面白い

ボスキャラを最初に倒さないと、自分の持ってる刀はすぐに欠けてしまう。
雑魚キャラからひとりひとり相手にしちゃうとボスにたどりつく前に武器(刀)が欠けて使い物にならなくなってやられちゃう。
だから、ボスに一目散に向かってゆくのが必須条件。

ここまではわかるが、ボスキャラが「死」だという。死に一目散に向かう、っていうのは死ぬということではなくて、死というものを「片付ける」。腹落ちするということ。

この方がいうには死を「片付ける」と、他の「悩み」たちは、悩みの「ボス」である「死」が片付けられてしまったので、「悩み」たちも逃げるっきゃないそうだ。



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■一人一人に提起されるどうしても解かねばならない問題
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中村僚

総発行部数5000万部を超える大ベストセラー
バガボンド
その主人公、宮本武蔵は、生涯60数度の真剣勝負に一度もひけをとりませんでした。
その数多くの真剣勝負の中には、必ずしも1対1ではなく、沢山の敵に取り囲まれたこともあります。
そんな時、イメージ的には、次々おそいかかってくる子分を倒してからボスを倒します。

たとえば「暴れん坊将軍」を思い出してみて下さい。クライマックス、悪者の屋敷で暴れん坊将軍が、「たわけ者。余の顔を忘れたか!」と一喝すると、悪代官の脳裏に江戸城で将軍に謁見した記憶がよみがえり、「…う、上様!」と一瞬たじろぎます。
ところがすぐに開き直り、「ええい、上様がこのような所に来られるはずがない。」「恐れ多くも上様の名をかたる不届き者じゃ、出会え~!」と叫びます。
こうして次々と子分がやってきて、大混戦となるのです。

ところが実際には、日本刀は刃こぼれして2~3人しか切れません。実際、あなたがそういう場面でまねしようとすると、悪代官にたどりつくまでにたぶん戦闘不能になってしまうので注意が必要です。
これができるのは他にも水戸黄門仮面ライダーなど、数名いますが、いずれも時代劇か、戦隊ヒーロー系で、現実問題としてはまず無理です。

ところが武蔵には、そんな時、現実に勝利する、実践的な必勝の定石がありました。
次々に襲いかかってくる子分を倒してからボスをたおすのが無理ならば、武蔵は、瞬時に一番強い、ボスは誰かを見極める。
ボス以外がきたら、よける。そして親分を直撃する。
これが必勝の定石でした。

私たちの人生も、次から次へと無理難題が飛びかかってきます。
期末テスト、受験、病気、金欠病、失恋、就職活動と、時として大混戦模様です。
ところが、これらを一つ一つ解決して、全部解決しきることができるでしょうか。
できるとすれば、暴れん坊将軍や戦隊ヒーローなどのテレビの世界です。
一生懸命自分の身の上に受けたトラブルとか、解決しなければならない問題に取り組んでるうちに、いつかくたくたになって、ばったりと倒れちゃう。

しかも、そうやって最後に、絶対死にたくないのに最後死んでかなきゃならない。幸福を求めて、色々なことで難局を乗り切ってきたのに、最後に人生最大の問題、「死」がやってくる。

かつて、その心境を書き残した大学教授があります。
──東大名誉教授、岸本英夫。
助教授から教授になって7年、スタンフォード大学客員教授として活躍中、あごの下にできたしこりに気づきます。
調べると、増殖性のものでした。ガンだったのです。51才の若さでした。

結婚以来、1度も病気らしい病気をしなかったと述懐する三世(みつよ)夫人が3週間後に日本からかけつけ、大手術が行われます。
手術は成功。
一時、なおった、かに見えました。
ところが4年後に再発。
もはやどんなに摘出しても、あごの下にガンが頻発し、手術をくり返しながら10年後、亡くなります。

同じ年、その10年間の闘病記「死を見つめる心」が、毎日出版文化賞を受賞しました。
そこにはこう書かれています。

「死の問題は、どうしても解かねばならない問題として、人間のひとりひとりに対して、くりかえしくりかえし提起される。どうしても解かなければならないけれども、どうしても解くことができない。これは、永遠のなぞとして、永久に、人間の上に残るであろう。」

子分を何人たおしても、最後、ボスでやられてしまうように、人生における色々な問題をどれだけ解決しても、臨終に、そんなことはまったく問題でないのです。
誰もが臨終にならねば気づかないことですが、いつ死が来ても笑って死ねる人生、我が人生に悔いなしといえる人生にするには、まず、最初に死の問題に取り組むことが大事なのです。

武蔵に最初にボスが倒されてしまうと、子分たちはどうなるのでしょうか。
自分よりはるかに強いボスがやられてしまったのだから、次に自分がかかっていったらあっさりやられてしまいます。

子分たちは、後ずさりしながら、「むさし~、絶対許さないぞ~、覚えてろよ~」と捨てぜりふを残し、逃げてしまいます。

こうして、死の大問題が解決できれば、その他の問題は、あってなきが如し。
いつ死んでも、悔いない人生、満足できる人生になるのです。