元祖【ひとり公論】

誰かには必ず、ほんの少しだけでも役に立つに違いない、という意味での公論

本当の健康法とは(3) 「ニュートラル・シンキング」

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間違いなくいえるのは、IT業界というのは、長時間の座り仕事による運動不足であるとか、長時間ディスプレイを見ることによる目の酷使とか、とにかくいるだけで不健康になる要素が満載ということです。これらと、実際の業務上のストレス(上司や部下、あるいはベンダとのコミュニケーションロスや、超短納期によるプレッシャーなど)とは関連性があります。

 つまり、後者のために長時間の仕事を余儀なくされて前者につながるわけですし、個々のメンバーの、運動不足や目の酷使による体調不良が、後者に影響をおよぼしていることも実はあるわけです。

 ですので、この負の連鎖を何とかして断ち切らなければならない、という強い決意が必要です。以前にも書きましたとおり、不健康である自分、運動不足である自分に酔っている段階では、いつまで経っても次のステージに進むことはできないのです。

 言い方を変えれば、この負の連鎖を断ち切るための手法、手順こそがエンジニアの包括的な「健康法」であるといえるでしょう(もちろん、エンジニア職でなくとも参考になると思います)。



 そのためにまず必要なのが、前述した「向上心」です。

 「IT業界は、常に自分に向上心を与えてくれる」という考え方はつまり、IT業界「でなくてはならない」ということです。自分はこの業界「でなければならなかった」あるいは「でなければ輝けない」ぐらいの思い込みでいいのです。

 多かれ少なかれ、皆さんそうではないですか?この業界以外で自分は果たして輝けるのだろうか、と考えたことはないでしょうか?他の業界でも自分は輝けるに違いない、と自信を持って言える方は少ないのではないでしょうか。



 IT業界というのは向上心を持ち続けることが比較的たやすい業界です。ですが、向上心とモチベーションとは別物です。モチベーションが下がる要因は、挙げればキリがありません。現在やりたい仕事をやれてない、とか、つまらない、キツい、上司がイヤ、客がイヤ、などなど……。

 モチベーションの低下が向上心すらも阻害してゆきます。ではどうするか?

 それは、モチベーションを下げないことです。モチベーションを下げないためにどうするか?

 それは、モチベーションが下がる要因を自ら挙げないことです。モチベーションが下がりそうな要因が眼前にあったとしても、それをモチベーションが下がる要因であると認識しなければモチベーションは下がりません。

 ニュートラルでいること。淡々としていること。なんでもかんでも、起こった事象を取りあえずマイナス要因として浴びてしまう義務は我々にはないのです。



 とはいっても、それは「ポジティブ・シンキング」とは少し異なります。

 我々は、現場でどのようなネガティブな出来事が起ころうとも常に笑顔で「元気にがんばっていこー!」などと脳天気でいることは、できないのです。

 我々は、ポジティブ・シンキング(およびポジティブを絵に描いたような人たち)に対して「軽くウザい」あるいは「ムリ」と考えているような人種です。また、IT業界そのものがポジティブ・シンキングと相当相性が悪いというのは、多くの人が感じていることだと思います。

 ただし、ポジティブな人材は、ゼッタイに必要ですし、ポジティブ・シンキングによりビジネス上有利になることは多々あるのですが、いきなりそこは目指さず、まずは「ニュートラル」を実践してみましょう。



 モチベーションが下がる要因を「自ら挙げない」のは、自分しかできません。他人がフォローしてあげることはできません。他人というのはフォローどころか、いろいろなトラブルの火ダネを持ち込んできます。

 他人の言動を気にすることはありません。とにかく自身が「今まで挙げていたのを、挙げないようにする」だけなので、カンタンっちゃカンタンなのですが、今私が述べていることに違和感を感じていらっしゃる方(「んなこた分かってんだよ」、あるいは「言うだけならカンタンだろ……」といったような)は、多分、相当遠い未来まで、自分を変えることはできないと思います。

 「あ、もしかしたらカンタンかも」と思っていただいた方は、すぐに変わっていけます。感想も何もなく、すーっと読んだ方は、おそらく現在健康なのだと思います。

 自分は「この業界(で生きる)しかないのだ」と、諦観にも似た気持ちを持っている方であれば、ある意味退路を絶っているわけですから、自らモチベーション低下の要因を挙げつらい、そして実際自らモチベーションを下げることがどれほどバカらしいかということか、分かるはずです。

 ですから、一番手っ取り早いのはそういう気持ちになることかもしれませんね。



 ただし、精神論で通すのは非常につらいものがあります。実際長時間労働で、プロジェクトが火を噴いているのに、「キツい」と吐露できないのは確かに厳しいかもしれません。

 そこで登場するのが「健康法」なのです。自分なりの健康法を確立していれば、つまり、フィジカルが健康であれば、精神的な負荷は相当軽減されるのです。さきほど申し上げたとおりで、フィジカルが健康であることにより、モチベーション低下要因を「はねのける」ことが可能になるのです。

 IT業界においてはこの、フィジカルコンディションの自己チェックについて、相当ないがしろにされていますし、おそらくこれからもそれほど変わらないでしょう。ですから、特にフィジカルを気にしてゆくことで、この業界で自身を差別化していくことができます。

 そして、フィジカルの健康というのはもちろん、「筋肉ムキムキ」のことではありません。我々はアスリートではないのですから、我々なりのフィジカルコンディションの仕上げ方、キープの方法というのがあるはずなのです。