元祖【ひとり公論】

誰かには必ず、ほんの少しだけでも役に立つに違いない、という意味での公論

スキル、センス

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ところで、脈絡もなく思い出したのですが、システム・エンジニアリングと同じ「横文字職業」でありながら似ても似つかない(?)ファッション、デザインの世界においては、「センス」が世界を席巻しました。

肉体が貧弱でも、運動ができなくとも、「スキル」すらなくとも、「センス」(というよくわからない概念)だけでオジサンたちを手玉にとり、業界を跋扈することができたのでした。

そして、ファッション、デザインの業界における「センス」と、我々の業界における「スキル」の末路は似ているのではないかと、考えた次第です。

そのココロは、「どちらも、それだけでは食っていけなくなる」。すでに、「終わりの始まり」なのでしょうね。

前者のセンスだけの人間にはスキルとの融合(すなわち、「努力」)が必要になる。後者のスキルだけの人間には加えてセンスが必要になってくる。



とりあえず、といいますか、「センス」とは何か、「スキル」とは何か、といった言葉の定義は、あえてしないでおきます。あいまいなまま、皆さんの中でイメージをふくらませて、お読みください(笑)。



昔「青春コンサルタント」という言葉が、僕の周りで局所的に話題になっていました。上流をやってる会社に新卒で入ると、数年で、パワポスキルばかり長けるようになり、現場経験のないままに大規模なコンサルの案件に投入されてゆく。

夢ばかりを描いて「で? それ誰がやるの?」と。「オマエ現場に入って死んでみる?」みたいな。

こういう人たちが上流に入ると「動かないコンピュータ」が産み出されます。

いわゆる「青春コンサルタント」には、センスはありません。といっても、一生ないと断じているわけではありません。ただ若くて経験が足りないだけです。



この業界における「センス」はたゆまない自己研鑽からしか生まれないと僕は信じています。学生のぽっと出でいきなり活躍できている人がいるのだとすれば、その人は学生時代から自己研鑽してきただけの話であって。

と、考えれば、我々のような凡人であれば、「スキルが身につく」→「(仕事における)センスがよくなる」という過程を経ることになると思います。凡人でないほど、このふたつの平行期間が長くなるのでしょうね。つまり、スキル的に未熟なうちに仕事のセンスが磨かれてゆくケース。

天才型。そういう人はいますね。それに対して努力型も、あたかもそのように(スキル的に未熟なうちにセンスが磨かれているように)みえますが、実はそうじゃなくて、ものすごい努力をしてあっという間にスキル的に熟達し、すぐ次のステージにいってしまっているわけです。我々凡人が気づかないうちに。



僕はほとんどこの業界しか知らないのですが、システムエンジニアリングにおける「センス」よりも前に、もっとベースとなる、「ビジネスマンとしてのセンス」というのは厳然としてあって、それは大前提なのですよね。

センスがある人をみていると、間違いなくビジネスマンとしてのベースもしっかりできていることに気づきます。というかそれを見せ付けられると凡人の僕はその圧倒的な差(埋められない)にヘコみます。

ビジネスにおける、ベースとなる「センス」というのは、おそらく「スマート」に近いですね。スマートとは単に頭がいいということだけじゃなくて、たとえば「振る舞い」からしてカッコいい、とか。。

システムエンジニアってホント、「スマート」な人って少なかったですよね。逆にいうと今は、増えてます。それはなぜかというと、「スマート」になる必要性が、生じたからなんでしょうね。

「スマート」でない「スキルだけのやつ」(ビジネスマンとして疑問符な)はいつまでもいつまでも「センス」を体得することはなく、よって、周りからの評価を得ることもできない。でも前回?書いたとおりで、昔々この業界の黎明期?のころは「スキルだけのやつ」でも周りからの評価を得ることができました。そして僕は、昔々、どちらかといえばそういう「スキルだけのやつ」に憧れていました。



現在、この業界にどっぷり埋もれて仕事をしている大部分の人たちは、まさに今パラダイム・シフトが起こっていることすら理解しておらず、未だに「スキル」万能だと思っているかもしれませんね。

でもそれはたぶん間違っていて(というか、未来には間違いになるというか。。)、まずはビジネスマンとしてのセンスを磨くところに立ち戻っていったほうがいいと思います。さらに、ビジネスマンとしてのセンスを磨く前に、いわゆる「ビジネス・スキル」を会得するところまで戻らなければならない人も、多いでしょう。当然「コミュニケーション・スキル」もここに含まれてきます。

でも、ビジネス・スキルの会得まで戻ることは、スキル万能説をいまだに支持する人たちからみると「退行」もしくは「ムダなこと」としか思えないのかもしれない。でもそれで、よいのです。そういう人はそのままで。世の中には「棲み分け」というのが厳然としてあります。

「気づき」を得た人だけが、前進してゆけばよいのです。



強引にまとめれば、[ビジネスマンとしてのセンス]*[いわゆるこの業界におけるスキル]=[システムエンジニアリングにおけるセンス]ということになりましょうか。

そしてここでやっと、「全人的存在」の話につながってきます。僕の考える全人的存在というのは単なるゼネラリストではないということは以前書きましたが、それはこの式に如実にあらわれています。

システムエンジニアリングにおけるセンス」のある人は、ただの「スキルだけのやつ」ではありません。つまり狭義の意味での「スペシャリスト」でもありません。ゼネラリストもスペシャリストも超越した、おそらく(この国においては)未来形です。

そういう人は、「圧倒的なモノヅクリ」をやってくれそうな気がします。そういう人たちだらけになって、日本を変えてくれることを、願っています。