死と宗教観3
抜粋・紹介
- 作者: 河合隼雄,中沢新一
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 1998/01
- メディア: 単行本
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (17件) を見る
- 作者: 河合隼雄,中沢新一
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2003/08/06
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 9回
- この商品を含むブログ (44件) を見る
人間に生まれたことの素晴らしい点は、食物連鎖を抜け出たおかげで不 安や苦しみが少なくなり、本当の楽を得るためにどうしたらよいかを考えることのできる「余暇」が、可能性として与えられている、というこ とにあります。ところがたいがいの人間は、そうやって与えられているはずの「余暇」を、ちゃんと利用できないでいます。もっとお金がほし いと言ってはあくせく働き、もっといい地位がほしいと言っては、あくせくと学内や社内で政治活動にいそしみ、もっと名誉がほしいといって は、勲章を手に入れるために時間を浪費し、そうでなくともレベルの低い楽を楽しむために、くだらない他人のうわさ話に耳を傾け、娯楽にう つつを抜かしたりしています。何という時間の浪費をしているんんだろう、とお坊さんたちは僕の目をのぞき込むのです。(略)
つぎは自分の人生をじっくり反省してみて、どんなにせっかくの「余暇」を自分が 無駄にしているかを、考えさせてくれます。(略)どんなにうまいものを食べても、それは舌の上を通過していくわずかな時間にだけ味わうことの できる、は かない楽にすぎないし(略)お金や勲章は幻影にすぎない。そういうものは、けっして本当の楽を、私たち生物に与えてはくれないのさ、と言っ て、だんだんと仏教に引っ張り込んでいくという手を使うんですよ。僕はみごとにはまりましたが(笑)」