元祖【ひとり公論】

誰かには必ず、ほんの少しだけでも役に立つに違いない、という意味での公論

死と宗教観3

死と宗教観3

抜粋・紹介

仏教が好き!

仏教が好き!

「中沢 (略)微生物から始まって草食動物から肉食動物まで、どんな 動物たち も苦しみを取り去って、楽を得たいと願っているのに、それができないでいる。巨大な食物連鎖のなかに生きていると、お腹をふくらませて楽 になりたいと、ほかの動物を殺しますが、お腹がいっぱいで楽になったのもつかのま、またお腹は空いてきて、狩りを始めなければならない。 それにどんな生き物も年を取る、そ して死を免れることはできない。たとえライオンでさえ、年をとればもはや安全ではなく、いったん力を失って倒れれば、ハイエナのような腐 肉を食べる動物の餌食になっていく。動物たちには、どうしたら本当の楽を得ることができるのか考えるための「余暇」がないっていうんです ね。
人間に生まれたことの素晴らしい点は、食物連鎖を抜け出たおかげで不 安や苦しみが少なくなり、本当の楽を得るためにどうしたらよいかを考えることのできる「余暇」が、可能性として与えられている、というこ とにあります。ところがたいがいの人間は、そうやって与えられているはずの「余暇」を、ちゃんと利用できないでいます。もっとお金がほし いと言ってはあくせく働き、もっといい地位がほしいと言っては、あくせくと学内や社内で政治活動にいそしみ、もっと名誉がほしいといって は、勲章を手に入れるために時間を浪費し、そうでなくともレベルの低い楽を楽しむために、くだらない他人のうわさ話に耳を傾け、娯楽にう つつを抜かしたりしています。何という時間の浪費をしているんんだろう、とお坊さんたちは僕の目をのぞき込むのです。(略)

つぎは自分の人生をじっくり反省してみて、どんなにせっかくの「余暇」を自分が 無駄にしているかを、考えさせてくれます。(略)どんなにうまいものを食べても、それは舌の上を通過していくわずかな時間にだけ味わうことの できる、は かない楽にすぎないし(略)お金や勲章は幻影にすぎない。そういうものは、けっして本当の楽を、私たち生物に与えてはくれないのさ、と言っ て、だんだんと仏教に引っ張り込んでいくという手を使うんですよ。僕はみごとにはまりましたが(笑)」