元祖【ひとり公論】

誰かには必ず、ほんの少しだけでも役に立つに違いない、という意味での公論

山田博士さん

ぼくたちの習った歴史は、「勝者の歴史」だったことを、皆さん、ご存 じでしょうか。
けっして真実とは言えない部分が多くあるんですね。
これは、古今東西を問わず、外国でもみなそうですから、歴史を見ると きは、その情報が誰が書いたものかどうか、いつも頭に入れておく必要があるのかもしれません。
とくに江戸時代に築きあげた先人たちの素晴らしさが、明治に入って、 ことごとく壊(こわ)されてしまった事実。
それらを知るにつけ、ぼくは愕然(がくぜん)としています。
いつもお話ししているように、日本人本来の伝統料理が消えてしまい、 パン食、肉食、乳食が広がったのも事実なんですが、そればかりじゃないんですね。
日本人が生きる知恵など、いつの世にも通用する素敵な財産すべてが破 壊されました。
江戸に乗り込んで来た官軍が、先祖たちが血と汗で築き上げて来た素晴 らしい慣習や技術を根こそぎ破壊してしまったんですね。
いや、慣習や食べものなどだけじゃなく、江戸の人たちの言葉やしぐさ までも、すべて潰(つぶ)してしまいました。
そのための弾圧も、凄(すさ)まじかったと言います。
それまで住んでいた江戸っ子たちは、難を逃れるため、大挙して地方へ 逃げたのですが、そのような「隠れ江戸っ子」さえも、官軍た
ちは全国各地を執拗に探し歩いて、すさまじい弾圧を加えていたようですね。
昭和の始めごろまでは、そのような記憶を持っている古老がかなり各地 におられたようです。
でも、そのような事実も、時とともに、失(う)せてしまいました。
これらのことは、ぼくたちが学校教育で習った歴史教科書にはただの1 行も載ってはおりません。