元祖【ひとり公論】

誰かには必ず、ほんの少しだけでも役に立つに違いない、という意味での公論

日本人とは何だろうか (鶴見俊輔座談)

日本人とは何だろうか (鶴見俊輔座談)

鶴見:歴史学は人間の立場から見なければいけないとわたしが言うのは、人間の根本の問題は空腹だと思うのです。わたし個人にとっても空腹がいちば んの問題です。そのことが歴史記述の底にあって、価値判断の底にあるような歴史観でなければ信頼できないと思うのです。だれが絵がうまかったと か、だれがバイオリンがうまかったとかいうふうなことを中心に書いていくような歴史ではしょうがないと思うのです。そこでは、いかにして人間に とって空腹が減っていくような立場を守れるか、ということをつらぬいているような歴史学でなければいけないと思うのですが、同時に人民大衆のなか にあって、疑う権利を守るような歴史学あるいは歴史意識でないと困る。