元祖【ひとり公論】

誰かには必ず、ほんの少しだけでも役に立つに違いない、という意味での公論

「悩み続けることに意味がある」(引用)

抜粋・紹介

縦糸横糸

縦糸横糸

(略)
もうひとつ例をあげよう。
イスラーム教の子どもと話し合っているとき、その子はいじめられっ子だったが、何とか自分を強くしてほしいと祈ったら、アッラーが力を与えてくれたのか、ぐっと相手をにらみつけることができた、と語った。
しかし、問題はそこでは終わらなかった。いじめっ子のほうが自分を強くしてくださいと神に祈るとどうなるのかという疑問が生まれてきたのだ。実際、考えてみると、この世には悪い奴で強いのがたくさんいるではないか。これに答えてほしいと、その子はアッラーに祈った。そのとき、この子は神の声を聞いた。「一生なやみつづけていいのだ。なやみをしまいこんでわすれないよういのりなさい」と。
この子はこの答に当惑する。神はもっと明快な答を与えてくれると期待していたから。しかし、その後も考え続けて、「悩み続けることに意味がある」ことを悟る。著者は「私がいかに彼に尊敬の念を抱いたかは彼は感じとったと思う」と書いている。一人の子どもが人生の大問題に突き当たり、それをすぐに解決するのではなく、「なやみをしまいこんでわすれ」ることもせず、しっかりとなやみ続けることにこそ人生の意味があると知ったのである。
子どもたちは大人を超える光を感じ、従って、大人の計り知れぬ闇も体験していることであろう。大人も子どもに負けぬように、もう少し悩み続けてもいいのではなかろうか。

(抜粋・紹介おわり)